わんぱく市立食べすぎ中学校について

ボカロP わんぱく市立食べすぎ中学校
ダンスミュージックを軸にした楽曲制作を行うMarbleさんと、歌詞・イラスト・MV制作を手がける鏡崎やおさんによるユニット「わんぱく市立食べすぎ中学校」。
ポップな名前とは裏腹に、陰鬱で繊細な感情を描いた歌詞と、クラブミュージックの要素を取り入れたサウンドで独自の作品を生み出しています。
インタビュー全文
名前の由来

——今日はインタビューを受けていただきまして本当にありがとうございます。ちなみに普段は名前の由来をほとんど聞かないんですが、さすがに『わんぱく市立食べすぎ中学校』の由来については聞いてもいいですか……(笑)。

そうですね……。これは本当に申し訳ないんですが、由来としては本当にはっきりしたものがなくて……(笑)。そもそもどういう流れで決まったんだっけ?

なんというかね……(笑)。

2人でボカロPを始める時に、チーム名を決めようっていう流れがあったんですよ。なんかハマるのにしようみたいな感じで。他に何か候補あったっけ?

多分出てたと思うけど、いや……出てなかったかもしれない。でも、ふざけ半分で2人ともご飯を食べるのが好きだからみたいな感じになってたんですよね(笑)。そこでMarbleさんが、「わんぱく市立食べすぎ中学校」って言ってて、「あはは……(笑)。いやよくね?」って最初は冗談と思ってたけどこれで!って決まりました。

いつも作業をしているDiscordのサーバーがあるんですけど、そこで『わんぱく市立食べすぎ中学校』っていう名前でやりますって報告したんですよ。

そこでもいいじゃんみたいになったんですよね(笑)。

サーバーの人たちも「何それ……?」ってなってたけどね(笑)。

一曲目を投稿した時に「本当にその名前にしたんだ……」って言ってた人もいた気がする(笑)。

——1発で名前を覚えてもらえますよね(笑)。

実際に良い効果が出てるなって感じますね。
ただ強いて言えば、なんで中学校にしたのかっていうところなんですけど、われわれが中学生時代にハマったコンテンツとか、それで得た感動を今でも追い続けてるっていう共通点があったので「中学校」にしています。

厨二(ちゅうに)心を大切にしようみたいな感じですね。やっぱり中学生時代にニコニコ動画もそうですし、ボーカロイドがとっても好きだったっていうのはありますね。

ここの価値観が同じっていうのがユニットを組んだ理由の一つでもありますね。私も中学1年生ぐらいでボカロに出会って、そこからずっと一緒に成長してきたというか、生きてきたのでずっと憧れがあったんですよ。だからボカロPを始めたっていうのもありますね。
ユニットを組んだ時のエピソード

——ユニットを組んだ時のエピソードについても教えていただけますか?

最初は全然ユニットを組もうっていう感じではなかったんですよ。元はというと知り合いの方が運営していた交流サーバーでたまたま初めて話したんですよね。
そこで、好きなものの話をしていた時に自分の芯になっているような、ボーカロイドの曲とか、好きなクリエイターさんとかがまるかぶりしてたんですよ。それに住んでるところもすごく近かったんですよね(笑)。

本当に偶然だった(笑)。

そこから「じゃあちょっと会いましょう」ってなって会ったんですよ。そこで、Marbleさんがクルーとして出演していらっしゃるボーカロイドのクラブイベントに足を運んで、ご飯も行きましたね。

カラオケも行ったね!

カラオケに行ったり、ご飯に行ったりしてて遊んでて、「一緒にボカロPのユニットを組んだら面白そうだよね」みたいな話はしてて、「じゃあやる?」みたいなね。

これがきっかけかな?

「1回きりでもいいか」ぐらいの感じではあったんですけど、1曲目を投稿してからコンピレーションアルバムにお声がけしていただいて、それならXのアカウント作ってちゃんとやっていくかっていう風になった感じですね。

——本当にいろいろな奇跡があっての結成だったわけですね!

それこそ、好きなコンテンツが一つでも違ってたら、多分ここまで仲良くなってないですね。コンテンツに対する熱量が2人ともすごかったからね。

ほんまにね。

——意気投合してのユニット結成だったわけですが、制作ですれ違うことはないんでしょうか?

衝突とか意見が食い違うことはそんなにないですね。基本的に僕が先に曲のラフを描いて渡して、そこから作詞とかMV、イラストに広げてもらう感じなんですけど、それこそしょっちゅう作業通話しながらやっているので、デモを出してもすぐにリアクションがもらえるんですよ。
なので、全然違うみたいな食い違いはないです。もちろん全てがとんとん拍子に進むわけではないんですけど、目指す方向性はぶれずにできてきたっていうのはありますね。
それぞれの制作について

——音楽はMarbleさん、歌詞やイラストは鏡崎さんと分業していますが、鏡崎さんの作業部分はいかがでしょう。

なんか私がしゃべりすぎてる気がするので……Marbleさんにあえて回すんですけど、Marbleさん的にはいかがと思いますか?

それでいうと歌詞は2人でいろいろ悩んだりもしますね。メロディーだったり、リズム感を意識したり。あと言葉の入る量には限界があるので、細かいニュアンスとか、言い回しを変えてリズムを合わせようみたいなところには時間をかけてすり合わせてますね。

本当に言葉通りのすり合わせって感じですね。
あと、実はユニットを組むまで作詞をやったことなくて、Xとかnoteに自分が思ったことをつらつらと書くのは好きでやってたんですけど。そういうのを見てMarbleさんが「歌詞を書いたら面白いと思うんよな」みたいに言ってくれたのも作詞のきっかけになりました。
ただ、私は自分の作ったものに対して強いこだわりがあるので、「この歌詞にこのメロディーを付けるのはどうなん?」みたいなとこまではいかないんですけど「こうしたい、ああしたい」っていうのは、けんかにはならないですけどちゃんと伝えるようにしています。
制作した楽曲について

——ありがとうございます。インタビューをするにあたって楽曲も聴かせていただきました。全体的にしっとりとした暗さのある楽曲が多いなと感じました。どうしてこのような作風になったんでしょうか。

うれしいですね。われわれが感じ取ってほしいと思ったところを全て受け取っていただいている感じがあります。

なんでこういう作風になってるのかな……。

ここに関しては、やおさんの作詞で世界観が作られているので、僕はそこに引っ張ってもらっているというか、うまくマッチングしているのかなっていうのはありますね。

そのちょっと陰鬱(いんうつ)な感じというか、ダークな部分は私が原因かも(笑)。
「また陰鬱(いんうつ)な歌詞ばかり書いてしまいました……」ってMarbleさんにいつも言うんですよ(笑)。自分がそういう作品ばかり好んで見ているし、個人で作っているものもそうだし、そういう作品があることで、その気持ちに自分の心を当てはめていいんだって救われてきた側(がわ)の人間でもあるんですよ。なので、ポップに暗いことを書くっていうのは結構大事にしていますね。

あとはユニットの名前がポップだし、Marbleさんの作るものってダンスミュージックに寄っているので、踊れるというかノれるものにしつつ、でも静かに聴ける作品にしたいっていうのは思っていますね。

——かなり自分自身を見つめて作品を作っているわけですね。

なんて言うんですかね。二面性があるっていうか、パッと見た感じは明るくてふわふわしてるけど、ちゃんと見ると心の奥底には何かあるみたいなところを突っつきたいし、自分も受け取り手としてそこを突かれたいなって思っているのでそこは意識していますね。

あとはその曲の主人公たちが何を考えて普段生活しているのかとか、この子は1人だとどういうことを考えるかなとか、そういうことを意識してると自然と暗い方にいっちゃう部分はありますね。

——ダンスミュージックとは正反対なイメージもありますが、制作していて感じることはありますか。

このユニットを始めて、二面性といいますか、ダンスミュージックだけど生音も使うっていう形式を取っているので、表現の幅が結構広がっているなと感じます。
そもそもいろんな曲が好きなので、いろんなジャンルをやりたいよねっていうのはあるんですけど、ジャンル感を守るっていうよりは、ちょっと外して人目を引くような展開を作るために、生音と電子音を使うシーンを意図的に分けて入れています。
わんたべ(わんぱく市立食べすぎ中学校)の楽曲では、そこのバランスをうまく取りたいなっていうのがあります。

——歌詞だけを見るとバンドが歌っていそうな感じがしますよね。

Marbleさんは個人的にダンスミュージックに触れる機会が多いと思うんですよ。ただ、私個人の好みはロックとかシューゲイザーとか、ポストロックとかバンドサウンドのものが好きなんで、そこに影響を受けていて。それでそういう雰囲気の歌詞ができてて、2人のジャンルがうまいこと合っているっていうのがあるような気もします。

——それと、どの楽曲も結構地肌が見えるぐらいには音を削って作曲されてますよね。

これは完全にクラブミュージックの技法で、引き算の編曲をしている影響が出てますね。あとは、一つのフレーズをループさせて、ドラムだったり、ベースだったりをメインで展開させていくことで、曲に変化を付けているのでそういった印象になるのかなと思います。
あとは、Aメロ、Bメロでは音数を押さえて、サビとかドロップを目立たせるっていうのは結構意識してやっています。
MVについて

——ぜひMVについても聞かせてください。現実とイラストを混ぜたMVがすごく特徴的だと感じました。

おっしゃる通り、ミュージックビデオで意識しているところは、現実とイラストを混ぜるっていうところに尽きますね。

——特に『サイクル』は印象的でしたね。

これの撮影はめっちゃ楽しかったよね。

楽しかった。サイクルのMVはMarbleさんが上京する前で、一緒に撮影できたんですよ。わんたべのMVに関しては、私が最初に絵コンテを切ってイラストを準備してMarbleさんに無理難題を押し付けるような形で提案をしてます(笑)。提案をして、絵を発泡スチロールみたいなものに書いて、裏に磁石を付けて、割りばしを引っ付けて、実際に風景を後ろからのぞかせたりとか、人形劇みたいな感じのMVにしようって言ってましたね。

あと、最近のボカロって「お散歩MV」っていうのがはやってて、お散歩MVっていうのはインターネットの人たちが勝手に言ってるんですけどね(笑)。

はやってるね~。

ただ、私たちはただのお散歩MVにはしたくなくて、何ができるかなって考えた時に、イラストの窓をくりぬいて車窓からのぞいてる風景を実際に電車に乗りながら撮るっていうことをしていました。
自然光の逆光感とか、そういうのって上から絵を載せるだけじゃ美しく撮れないと思うんですよね。だから実際の太陽光で撮りたいっていうのがありました。

——本当に自然な光があることによって感傷的な表現ができていましたよね。

唯一無二のものになったなって思います。イラストへの影の入り方とかも、安心感が違うといいますか。やおさんに準備してもらうものが多すぎるんですけど、同じスタイルかつ新しいアイデアでまた撮りたいなっていう気持ちはありますね。
MVの見どころ

——MVの見どころについてもぜひ教えていただけたらと思います。

ここっていうわけじゃないですけど、どの曲もMarbleさんが意識して聴いてる人を裏切るような展開を作っているんですよね。そこが面白いと思うんですよ。聴いてる側(がわ)も明るい曲が急に暗い曲になるとびっくりしちゃうと思うんですけど、そこにもっとパンチ力を持たせたいっていう気持ちは毎回あって、そうなるように絵コンテを切ってますね。

特に『サイクル』でいうと、実写パートからドアの音で急にアニメーションのパートに入るんですけど、ここは急展開というかかじを切る演出ができたかなって思ってます。『DOKOKANO ONE ROOM』に関しても、陰鬱(いんうつ)なところから逆に明るくノリノリな展開になるので、うまいこと緩急を付けられたかなって思います。これと、やっぱり心理描写とか、作詞でどういう風景をイメージして作ったとかっていうところはめちゃくちゃ大事にしてますね。
音楽をどう受けとってほしいか

——本当に大切に作られている作品だということがわかりました。そういった作品をどのように聴いてほしいなどあるでしょうか。

生活の中にある音楽になってほしいですね。歌詞に自分を重ねてもいいですし、ほんの少しでもその人の人生に影響があるといいなとは漠然と思っています。もちろんくらってほしいとも思ってるかも(笑)。ただ、その人が必要な時に聴いてほしいっていうのが1番にあります。ありつつ、やっぱりくらってほしい。くらってもらえるだけのメッセージを俺は音で、やおさんは歌詞で伝えられたらいいなっていうのはありますね。

私もほぼ一緒ですね。
中学校ってクラスの中に 20人とか 30人とか生徒がいるじゃないですか。一人ひとりが違う個性を持っていると思ってて、わんたべの曲も「この曲は刺さるけど、この曲は別に」みたいな人がもちろんいていいと思ってます。だから曲を作る度に意識しているのは、その教室の誰かに刺さってほしいみたいな気持ちがあります。

わんたべとして伝えたいのは、みんな自分らしくみんなにいてほしい。そこにこの曲があるから「自分のままでいいのかもしれない」みたいな自己陶酔できるものを届けたいですね。すごくかっこ付けた言い方をすると、聴いてくれている人の教室にある席を作るようにしたいし、そういう子どもの心特有の気持ちとか、こじらせてる気持ちって別にあってもいいしね。

忘れないでいてほしい。

そうそうそう。……っていうのが大きいです。

——この世情ではとても大切なメッセージだと思います。

あとは、私が個人で活動している方の視聴者の方とか、MarbleさんのDJをよく聴きに行ってるような方たちに対しては、お互いが持っている武器を掛け合わせてできているのがわんたべだと思っているので、Marbleさんをよく知ってる方たちには、私のメッセージ性とか歌詞とか演出を見て浸ってほしいですし、逆に私をよく知ってる人にはMarbleさんの音楽で踊ってほしいなって思ってます。
やっぱり生き方に影響を与えたいし、誰かの居場所を作りたいっていうのは大きいかもしれないですね。

自分たちがそうしてもらったようにっていう気持ちがありますね。本当に鏡崎やおさんの威力に助けられています。
今後の目標や挑戦

——本当にいろいろ聞かせていただいてありがとうございます。ぜひ今後の目標や挑戦について教えてください。

方向性をそこまで変えるつもりはないんですけど、作曲とか編曲は進化させたいなっていうのは強く思ってますね。人の心を動かせる展開、進行、メロディーを常に試行錯誤していきたいです。ピアノの音一つとっても曲を作っていく上で、どんどん研いでいきたいというか、磨いていきたいと思っています。

挑戦っていうところでは、生音とクラブミュージックの融合みたいなところをどんどん模索したいというか、面白い組み合わせ方を試していきたいですね。最近やおさんとギターの音ってかっこよすぎるよねっていうのを共通認識にしているので、ギターの音を活かしたダンスミュージックを作りたいなって思っています。

私は作詞に関して未熟すぎる部分があると思っていて、もっともっと鋭くいきたいんですよね。歌詞を見た時に、人の心の支えになるような受け皿的な歌詞ももちろん書きたいですけど、痛いところを突ける歌詞もいっぱい書きたいですね。ただ、さっきも言ったように、いろいろな人がいるのでいろいろな人に刺したくて。ポップな歌詞も書きたいですし、びっくりマークとか、星とか、ハートがいっぱい付いてるような歌詞ももちろん書いてみたいです。そういう意味でいろんな歌詞を研究したいし、語彙(ごい)力もそうだし、メロディーに歌詞をうまくはめるのがあまり得意じゃないので、ここをすぱっとはめられるような引き出しを身に着けて歌詞を書きたいですね。
あと2人でギターの訓練をしたいなって話しているんですよ。

うんうん。

リアイベ出た時とか生の楽器をその場で弾けたらめちゃくちゃ面白いと思うし、ギターってやっぱりかっこいいので、ギターを入れていきたいですね!
意外なつながり

——活動的な面ではいかがでしょうか。

これは1個明確に掲げているのがあって、VRChatでパフォーマンスをしたいんですよね。実は、このインタビュー企画に応募してみたらっていうのもVRChatの友達から教えてもらったんですよ。

——そうだったんですね!

ちなみにTukkunさんには1回くりえいてぃ部でもお会いしてると思います(笑)。記事も見たことあって、アバターもマーモットだったと思うので、おそらくTukkunさんだと思います。

——それは……。私ですね(笑)。

ですよね(笑)。
あとは、今Marbleさんと住んでいるところがあまりにも離れているので、VRChatだとパフォーマンスがやりやすいっていうのもあります。リアルの方でも去年出させていただいたイベントで「良かったよ」っていう声もすごく多くって、自分たちだからできるパフォーマンスができたなっていう確信を持てましたね。それに、ダンスミュージックだからVRでノリノリになれるし、ライブペインティングっていうのもやりやすいのかなって思っています。
2人とも歌うのが好きだから、もっとライブパフォーマンスみたいなことを2人とももっとやりたいよね。

ほんまにね!
みなさんへメッセージ

——本当にいろいろ聞かせていただきましてありがとうございました! 最後に皆さんへメッセージをお願いします。

聴いていただいた皆さん。まずは見つけてくださってありがとうございます。楽曲に関しては、まだまだアイデアを出していく予定ですので! まだまだ駆け出しのユニットではあるんですが、一緒についてきてくれたらうれしいし、後悔はさせないよという気持ちです。本当にそれに尽きます。面白いものを作っていくので、見てってください!

まずはわんたべを見つけてくださって、聴いて見てくださってありがとうございます。もう私はかたくなにこれを言ってるんですけど、わんたべを見て聴くということは、もうわんぱく市立食べすぎ中学校に皆さんご入学いただいてるという形で私はやらせてもらってますので。ここではでかい口をたたくんですが、みんなの席は絶対に私たちが作るので、心を預けてわんたべを見てほしいし、もっともっと楽しいユニットにして、いつかみんなでおいしいご飯を食べて、いい音楽を聴いて、絶対に私たちなりに幸せになりましょうねと思いますので、幸せになろう!

最終目標はみんなで幸せになれるようなユニット作りです! よろしくお願いします!

よろしくお願いします!