風街ピリカ 氏について

ご紹介

VSinger/作編曲家 風街ピリカ 氏

物語音楽VSingerとして活動する風街ピリカ氏。物語と音楽体験が一体となった作品を作りたいと語り、独学で積み上げてきた音楽をリュックに背負う。そんな風街氏が作り続けるのは「一人になりたい時に寄り添える」作品。楽曲制作の哲学から、ミュージカル・ゲーム制作への展望まで、たっぷりと語ってもらった。

インタビュー全文

音楽を始めたきっかけ

Tukkun

——今日はVSingerとして活動されている風街ピリカさんにインタビューできて大変光栄です。早速ですが音楽を始めたきっかけについて教えていただけますか。

風街ピリカ

僕って、風町美音が“異世界”に生み出した美音自身のコピーされた人格なんですけど、1周年を迎えた時に僕と美音が入れ替わってこちらの世界に来たんですよ。なので、僕自身が経験したわけじゃないんですけど、風町美音の記憶をたどる形でならお話しできるかなと思います。

Tukkun

——ぜひよろしくお願いします。

風街ピリカ

元々歌の好きだった子どもだったようです。そこから中学生ぐらいまで時間が進むんですけど、「カラオケがうまくなりたい」っていう理由でボイトレについて調べて独学でやり始めたのが歌い始めたきっかけなのかなと思います。楽器もやったことはないようで、音楽に関しては独学がほとんどだったみたいですね。ただ、大学生になったタイミングで合唱部には入ってたようです。

音楽を作り始めた時期

Tukkun

——風町さんが音楽を作り始めたのはいつぐらいだったんでしょうか。

風街ピリカ

これも中学生の時だったようなんですけど、好きになった音楽をニンテンドーDSの『大合奏!バンドブラザーズ』で耳コピして投稿していたのが始まりのようです。そこから、作った音楽をニコニコ動画に投稿したいって思ったようで、そうするとパソコンで曲を作らないといけないじゃないですか。そこからいろいろ調べて、DTMについて学んでいきつつ、ボカロPをやっていた時期もあったみたいですね! 当時も作曲依頼があったみたいで、作曲家として結構活動していたみたいですよ!

Tukkun

——コピーの人格ということで風街さんにも伺いたいんですが、相当しっかりした完成度の高い曲を制作されているんですが、特別訓練を受けているわけではないんですもんね。

風街ピリカ

当時は菩薩(ぼさつ)Pさんっていう方が作曲講座をニコニコ動画に投稿してくれていたので、そういうのはかなり見ていたようですし、ネットで記事を探して読んでいたみたいです。

風街ピリカ

後は、yukkedoluceさんが好きだったり、ゲーム音楽が好きだったりしたので、それの影響があるのかなとも思います。ゲームのBGMや楽曲って、そのゲームのストーリーと密接に関わっていて、ストーリーを知った上で聴くと鳥肌が立つみたいな体験ができるじゃないですか。そういう物語と一体になった音楽体験を作りたいっていう発想自体がゲーム音楽から来ているのかもしれないですね。

ショートの歌ってみた

Tukkun

——風街さんのショートを見ていると、BUMP OF CHICKENさんの歌をよく歌われていますよね。

風街ピリカ

もう大好きなんですよ(笑)。風町もそうだったんですけど、BUMP OF CHICKENさん、SEKAI NO OWARIさん、Aqua Timezさん、yukkedoluceさんっていうこの4本柱で構成されていますね(笑)。特にBUMPさんとかセカオワさんとかは物語調の音楽を作っていらっしゃいますし、とにかく気に入ったアーティストさんをずっと聴いて自分の中に蓄えていったっていう感じです。

いつ音楽を活動に

Tukkun

——それこそ、これまで趣味としての側面が強い音楽ライフだったと思うんですけど、活動者としてかじを切ったタイミングについても教えていただけますか。

風街ピリカ

やっぱりボカロPとして曲を投稿したのが、クリエイターとしてがっつり移行したタイミングだったかなと思います。DTMを始めて最初の5年ぐらいは1年1曲みたいな感じだったんですけど、ボカロPを始めてからは楽曲作りにも慣れてきて、そこで作品の方向性も固まったんですよ。ここから作品作りの速度が一気に速くなった感じですかね。やっぱりニコニコ動画に投稿するとコメントももらえて、クリエイターとして作品を世に出すのが楽しくなったし、軌道にも乗ったしっていう感じです。

歌声について

Tukkun

——とても聴きやすい歌声が特徴だと感じているんですが、なにか意識していることはありますか。

風街ピリカ

物語音楽VSingerとして活動しているので、楽曲の歌詞には明確にストーリーがあるんですよ。なので、物語を語り聞かせるような“語り部”になるつもりで歌うっていうのは一つの軸としてあります。僕が見せたいのは物語と音楽なので、それが1番前を歩いて、自分の歌声はその後ろを付いて行くっていうイメージで歌っています。

風街ピリカ

本当に面白い物語体験を届けたいっていう思いが一番強いので、物語のプロットから楽曲を作ることも多いですね。上がっている曲の中だと『テセウスの星』『緑風の子と天空島の手紙』がお話を作ってから曲を乗せた感じになっています。

Tukkun

——なるほど。だから歌声も楽曲に馴染(なじ)ませるように作っているんですね。

風街ピリカ

MIXの好みではあるんですけど、オケと溶け込みつつ、楽器としては少し前に出てるぐらいのボーカルが好きなんですよ。なので、お仕事でご依頼いただいた時なんかは「もう少しボーカルを前に出してください」って言われることもあって……(笑)。
後は日本語の流れを大事に歌いたいなっていうのも1個ありますね。文章として朗読した時にどんなイントネーションになるのか、抑揚のどこを抑えるのかっていうのは考えながら作っています。

歌詞とメロディーラインついて

Tukkun

——いろいろな楽曲を聴かせていただいた上で、とても簡単な日本語が使われている曲だなと感じています。

風街ピリカ

僕の好みの話になってしまうんですけど、明確な答えのある作品が好きなんですよね。読み手とか解釈によって物語が変わるのも、もちろんいいとは思うんですけどね。普段SF小説を読んでいるので、明確になにが起こって、どうなって、こうなったっていう理屈がある方が好きで(笑)。なので、それを表現するために解釈の余地がないわかりやすい言葉とか、歌詞だけを読んでも、出来事がわかるように心掛けてますね。

Tukkun

——それにメロディーラインがとてもキャッチーですよね。

風街ピリカ

実はさっき挙げたアーティストさん以外にも、アイドルソングが結構好きなんですよね。アイドルソングって1回聴いたら耳に残るようなキャッチーなメロディーで作ることが勝負だと思うんですよ。なので、そこの影響があってわかりやすいメロディーになっているのかなって感じてます。

風街ピリカ

その上で、メロディーの山を明確にするっていうのはすごく意識していますね。一番盛り上がる部分に対して、どう持っていくのか、あるいは段階的に上げていくのか、それとも一気に飛んでインパクトを作るのかみたいな感じで、必ず盛り上がりがあって、耳に残るメロディーラインっていうのは意識しています。

変拍子

Tukkun

——変拍子の曲も多いですよね。

風街ピリカ

これはケルト音楽とか3拍子が結構好きっていう好みの話ですね(笑)。ただ、やっぱりファンタジーとか現実離れしたような世界観を表現するのにピッタリというか、僕の世界観とか景色とかを表現するためには3拍子が必要っていうんですかね。そこに一番合う拍子が3拍子っていう感じです。

風街ピリカ

例えば『紅の魔女とカラスの子』はCメロで主人公が倒れて呪いにかけられてしまうシーンが浮かぶんですよ。そこから、その混沌(こんとん)とした情景を描写しようと思ったら自然と頭の中に3拍子が出てくるっていう感じです。僕の引き出しの中に4拍子と3拍子が同じぐらいの大きさで組み込まれているんだと思います。

楽器構成とコード進行

Tukkun

——楽器構成についても教えてください。あまり使われない打楽器や民族楽器が使われていますよね。

風街ピリカ

自分の色を出すために楽器構成はすごく意識しています。前の話とつながるんですけど、やっぱり明確に答えがあって、わかりやすい作品が好きで、私もそういう作品を提供したいんですよ。なので、水の中を描写している曲だったら「これは水の中だな」ってすぐわかるような音を提供したいなって思っています。だから、景色に合わせた音を使うぞっていうのは僕の中で1本軸になってるかなって思います。

風街ピリカ

これもわかりやすい例だと『ガラクタの子と鉄屑城』になるんですけど、題名の通りガラクタと鉄の山の中で物語が展開されるわけなので、金属をたたいた音というか、ドラム缶とか空き缶をたたいたような音をパーカッションに使ってますね。こういう感じで、景色に合わせた音を使うようにしています。

Tukkun

——コード進行もわかりやすいですよね。

風街ピリカ

僕が大好きというか、生きがいにしているコード進行がありまして、それがカノン進行なんですよ。これが本当に大好きで、カノン進行の曲をずっと作ってると、どの音なら破綻しないとか、そういった経験則が積み重ねられているので、わかりやすくなっているのかなって思います。
大好きの度を越えてる部分もあるんですけど、基本的にカノン進行の曲しか聴いてないですし、カノン進行プレイリストを作って今350曲ぐらいになってます(笑)。

空白の使い方

Tukkun

——なるほど(笑)。いろいろな音色を使って音楽を作っていらっしゃいますが、結構空白も使われますよね。

風街ピリカ

ここに関しては、楽曲の全体を俯瞰(ふかん)した時にリスナーがどこでどういう感情になるかとか、この部分でどういう風な印象を受けてほしいかっていうのをかなり計画して作ってるところがあるんですよね。なので、音で満たしてる部分を作っていく中で、そろそろリスナー的には飽きてくるかなって思った部分の音を抜いて、「ここならぐっと引き込めそうだな」っていうのは考えてやってます。

風街ピリカ

特に楽器のバランスの話にも関係してくるんですけど、低音の楽器がいくつあって、高音の楽器がいくつあるから、楽曲全体のバランスがどうなっているのかっていうのはかなり見ています。その上で、音を削って引き付けるのか、無音にした方がいいのかっていうのも考えながら作ってる感じです。

どのように楽曲を聴いて欲しいか

Tukkun

——本当にいろいろ考えながら楽曲を作っていることがわかりました。そういった楽曲をどのように聴いてほしいでしょうか。

風街ピリカ

やっぱり物語を届けたいっていうのが一番なので、僕の楽曲で気に入った曲があれば、ぜひその歌詞を物語として読んでほしいなっていうのは一つありますね。音の奥に隠されているストーリーをぜひ読んでもらえたら! 後はHPを空想図書館として運営しているんですけど、それこそ図書館を利用するみたいな感じで気負わず自分の世界に閉じこもるつもりで、曲を聴きに、物語を読みに来てほしいなっていうのは思っています。

風街ピリカ

僕自身も物語作品を読んで、自分の世界に閉じこもることで助けられてきた面っていうのもあるので、同じように一人になりたいとか、一人で静かにしたいっていう時に、自分の作品が寄り添う存在になったらうれしいかなっていうのはあります。

今後の目標について

Tukkun

——いろいろ聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。ぜひ今後の音楽的なところでの目標や挑戦はありますか。

風街ピリカ

実は明確に目指しているところとか、やりたいことっていうのはないんですよね。どっちかというと、新しい物語体験とか物語作品を作っていきたいっていう気持ちが大きいですね。なにか新しい刺激になるような物語を作ったら、自然と僕の音楽もそこに引っ張られてレベルアップしていくと思うので、どんどん物語体験をレベルアップさせていきたいなと思います。

Tukkun

——今後、活動的な面ではいかがでしょうか。

風街ピリカ

2026年5月10日に『七つ星の物語リレー』っていう歌枠リレーをやるんですけど、これ自体が僕にとっての挑戦になっています。歌枠リレーではあるんですけど、その中に朗読劇があって、すべての歌枠をつなげると大きな結末に向かっていくみたいなそんな歌枠リレーを準備しています!

風街ピリカ

後もう一つはミュージカルをやりたいなって思っています。お友達の“殻貝ひめ”さんと“蛇園かのん”さんの3人で立ち上げていて、僕がそこで音楽監修と脚本を担当するんですよ。なので、そこに向けてミュージカルとか映画をいっぱい見て、ミュージカルの素養を育てたいなって思っています。アウトプットとインプットを両方やっている最中ですね!

風街ピリカ

それと、ゲームとかアニメとかのエンドロールに使う音楽を作りたいなっていうのを1個目標に持っています。僕エンドロールが大好きなんですよね。一通り映画とかゲームを見たり、やったりしたその最後に聴くからこそ大きな感動があるっていうのがいいなって思うんですよ。それで、エンドロールを作るために、自分でゲームを作ろうかなっていうのも計画はしています。謎解きゲームが好きなのでそういう方向のジャンルでやりたいなって思っています。

みなさんへのメッセージ

Tukkun

——最後に皆さんへメッセージをお願いします。

風街ピリカ

とにかく、これからも新しい物語体験、より面白い作品を生み出していくつもりです。クリエイターとして停滞しないように動き続けていくつもりなので、ぜひこれからも楽しみに待っていてください。応援よろしくお願いします!

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