めた(生原愛)氏について

ご紹介

作編曲家 めた(生原愛)

教会育ちで、幼い頃からクラシックやオルガン曲が身近にあったという環境で育ちながらも、音楽の道に進むことには身内から一度も賛成されなかったという作曲家・めた(生原愛)氏。クラリネット部での出会いや独学での作曲活動、そして大学卒業後の思わぬ転身を経て、現在はインディーズ映画の劇伴なども手がける作曲家として活動している。生音楽器へのこだわりや編曲・ミキシングへの姿勢、そして創作を続ける上で大切にしていることまで、たっぷりと話を聞いた。

インタビュー全文

音楽との出会い

Tukkun

——作曲家として活動されているめた(生原愛)さんにインタビューができて大変光栄です! 早速ですが、音楽を始めたきっかけについて教えてください。

めた

僕、家がキリスト教の教会なんですよ! 父が牧師で母が教会のオルガニストですね。その上、音楽が好きな両親だったので、小さい頃からクラシックとかオルガン曲とかをカーステレオで流しているような家でもありました。母方の祖父も趣味で音楽をやっていた人なので祖父からはラテンアメリカの音楽を聴かされて育ったような感じになります。だから音楽は気が付いたら身近にあったっていうのが正解ですね。

Tukkun

——本当にすごいお家ですね。

めた

音楽に触れたきっかけは、母親の影響なんですけど、「ピアノは弾けた方が将来的に楽だ。便利だ」っていうので、半ば強制的にレッスンに通わされていたっていうのが最初ですね。
教会って1週間に1回礼拝があるんですけど、そこで賛美歌を歌うんですよ。それの子ども学級みたいなものがあって、大人がやるのと同じようにオルガンの伴奏が必要なのでそういう機会に伴奏をさせてもらったりもしてました。自分の子どもなら都合良かったっていうのもあったと思うんですけど、半分仕事みたいな感じですね(笑)。

Tukkun

——そこからプロの作曲家として活躍されてるのですごいですよね。

めた

でも、僕がミュージシャンになりたいっていうことに身内から賛成されたことは1回もなくて。

Tukkun

——ええ!

めた

あくまで将来的に有利なスキルを身に付けさせた方が良いっていう理由だったので、今でいう教育ママみたいな感じだったんですよ。

クラリネットアンサンブル部への入部

Tukkun

——そういうことだったんですね……! それ以降はどうだったんでしょうか。

めた

中学に上がるタイミングで別の県に移りまして、これもちょっと変な話なんですけど、通ってた中学校に吹奏楽部がなくて、クラリネットアンサンブル部しかなかったんですよ(笑)。小学校でブラスバンドをやっていたので、音楽系の部活に入るにはここしかなく……、クラリネットをこのタイミングで始めました。家とか関係なく、自分の意思で音楽をやりたいなって思って飛び込んだのは多分そこがスタートかなって思います。

Tukkun

——これまた珍しい部活で……

めた

顧問の先生がNHK交響楽団にいたクラリネット奏者の方の門下生で、音楽に対しては本当にこだわりが強くて「吹奏楽の顧問はやりたくないからクラリネットアンサンブル部を作った」って言ってたぐらいですからね。先生に「普通の男子中学生にしては音楽を知ってるね。何を聴いてきたの?」って質問されたので「aikoとか聴いてました」って言ったら「そうか。じゃあポップスを聴くのは止めようか」「クラシックを聴いて勉強しようね」って言われて(笑)。面白い人でしたね(笑)。音楽はその先生にずっと教わってました。

作曲への道

Tukkun

——現在作曲家として活動されていますけど、曲を作ろうと思ったきっかけって何だったんでしょうか。

めた

ピアノを習っていた時に戻るんですけど、当時本当にクソガキで、ピアノの運指を習う楽曲を弾いていて「このレベルで曲って言えるんだったら、自分にも書けるんじゃないか」って思ってしまったのがきっかけですね! 五線譜ノートももらっていたので、そこに音をいくつか書いて動きを付けて「これが曲だ!」って言っていたものが作曲の始まりでした(笑)。

Tukkun

——ノートへ手書きしてたんですね! そこからどうやってDTMに移ったんでしょうか。

めた

中学に入った時にピアノが上手な同級生がいまして、その子が弾いていた楽曲っていうのが、ドビュッシーとか、ラヴェルみたいなフランス近現代の楽曲で自分が習ってた楽曲とは全然違ったんですよ。そこで、自分がやっていた音楽ってめちゃくちゃ狭かったのかもしれないっていうことに気が付き始めて、そういうものをまねしたくてDTMに触ったっていうのがきっかけになります。ピアノがそんなに上手じゃなかったんですけど、音は分かったのでパソコン上でそれを再現するっていうことをしていました。これだったら自分のきれいだと思う和音を延々と探せるし、音楽理論を勉強できるので知識も身に着けていった感じですね。

Tukkun

——確かに理屈を固めて作曲されていますね。そこからは音楽の道に行かれたんですか?

めた

実は音大も専門学校も行ってなかったので、作曲の勉強とかは独学でした。ただ、大学入る直前ぐらいに山口博史先生にいろいろ面倒は見てもらっていて、その後は音大がやってる講習会とかに参加しつつ、仲間とか友達を作っていって、教え合いとか見せ合いをして勉強していった感じですね。

めた

個人的には音楽の道へずっと進みたいという気持ちはあったんですけど、身内にずっと反対されていたのと、金銭的な余裕もなかったので断念しました。ただ、そうやって活動してたら声優さんのボイスドラマのBGMを作ってほしいっていう依頼がきたり、インディーズ映画の依頼がきたりしていたので、大学の専攻も勉強しながら仕事もしていたような感じになります。

音楽が仕事に

Tukkun

——音楽が仕事になった時ってどんなタイミングだったんでしょうか。

めた

大学を卒業するタイミングでいったん普通に就職したんですけど、そこが俗に言うブラック企業で、応募の条件と全く違う環境で働かされたんですね。僕は続けたいと思っていたものの話し合いの過程で放流されてしまいまして、仕事が無くなっちゃったんですよ……。結構ショックで立ち上がれない期間もあったんですけど、次何しようかって思った時に、学生時代にやっていたことをもうちょっと続けてみるかっていうことで、音楽の道にかじをきったっていうのが音楽を仕事にしたタイミングです。なので、全然ポジティブなきっかけじゃないんですよ。

音色について

Tukkun

——ぜひ楽曲についても聞かせてください。全体的に生音の要素が多く含まれた楽曲が多いですよね。

めた

今のご時世的に生音楽器を録音するのが難しいっていうのもあるんですけど、生楽器らしい表現っていうのは、自分として絶対にやりたいと思っていることではありますね。これまで話をしてきたように、生音に近い領域でずっと生きて来て、生演奏っていうことに対してのロマンが強いんだと思います。そのロマンを表現したいのと、そもそも自分が勉強してきた領域も生演奏前提での作曲が多かったので、そういった部分がにじみ出たのかなと思いますね。

インディーズ映画『お人形少女つばき』について

Tukkun

——インディーズ映画の『お人形少女つばき』で作られた楽曲について聞かせてください。全体を通して不安を感じるような、でもきれいな世界観で余韻もある音作りがすごく特徴的でした。生音楽器の限界にも挑戦しているような印象でしたね。

めた

『お人形少女つばき』自体が、好きになった女性と仲良くなって過ごしていたら、実はその女性が人形だったみたいなストーリーになっています。夢と現実の境目のようなものを曖昧にする必要があったので、生楽器の限界を突き詰めた部分もあったと思います。ギリギリ演奏はできるかなっていう音の詰め込み方をしたような記憶がありますね。

Tukkun

——特に『お人形少女つばき』の『錯乱』はクラリネットにだいぶ無理をさせてますね(笑)。

めた

それについては、僕自身がクラリネットを練習していた頃に音大受験の曲を吹けるぐらいには練習していたので、ここまでやっても怒られないだろうみたいな謎の自負があって、そんな感じの曲になっています(笑)。

編曲やMIXについて

Tukkun

——編曲やMIXについての話にもなりますが。どの楽曲も楽器全体のバランスを取るような作り方をされていますよね。

めた

特にミキシングに関していうと、曲が一番映えるポイントを逆算して全体の重心を整えているっていうのはありますね。僕自身が“ある楽器”のプレイヤーというよりは“作曲家”なので、特定の楽器に重心を寄せたりっていうことはせずに、その曲が一番きれいに収まる部分を探せるっていうのはあると思います。もちろん、その中にはクライアントさんの要望だったり、作曲家さんの方向性だったりっていうのも反映されるんですけど、どの楽曲も毎回どこがきれいに収まるのかっていうのはこだわりながらやっています。

めた

どういう楽曲でもいいバランスで編曲できているっていう部分に関しては、やっぱり父の聴いていた音楽とか祖父の聴いていた音楽に影響されている部分もあります。あとは友達の影響でメタルを聴いていたこともあったので、好き嫌いせずにできているのかなと思う部分もあります。

インディーズ映画『泡沫の人魚』について

Tukkun

——同じくインディーズ映画の『泡沫の人魚』ではものすごく楽器数が少ないのに成立している部分に技術力があるなと感じましたが、ここについても教えてください。

めた

映画に関わらず、クライアントさんの要望がまず第一にあるので、音を少なくしてほしいって言われたら少なくするし、増やしてほしいと言われたら増やすしっていう感じでやっています。でも音数を少なくしてほしいと言われた中でやるのであれば、使える最小限の方法で最大の効果を出すためにはどうしたらいいのかっていうのは常に考えているかもしれないですね。
コンセプト自体がすでに手癖まで落とし込めてるような楽曲だったらパズルゲームみたいな感覚で作れるんですけど、以前やったような技を次に作ろうと思っている楽曲ではやりたくないとも思っているので、曲を書くスピードはめっちゃ遅いです(笑)。

細部への気配り

Tukkun

——あとは最初の数音でどんな雰囲気の曲なのかっていうのが分かるところにもプロの技を感じましたが、ここにこだわりはあるでしょうか。

めた

最初の数秒で心をつかめるかどうかって結構大事じゃないですか。なので、そこはすごく気を付けている面ではあります。演奏が上手なピアニストって演奏する前の手を上げる瞬間で引き込まれるというか、そういう音楽にしかできないロマンがあるんじゃないかなって思っているので。

Tukkun

——曲の終わらせ方も多種多様で面白く聴かせていただきました。

めた

自分の中で、曲がどういう風に終わったらいいかっていうのを聴き手の気持ちで作ってます。だから終わり方を作っているという意識はあんまりなくて、どう終わらせるのかっていうのを聴いていると、いくつか選択肢が頭の中に出てくるので、その中で一番きれいなものを選ぶ感じです。

Tukkun

——本当に細部までこだわり抜いてると思うんですが、大変ではないですか。

めた

その楽曲によってコンセプトがあるので、特定のジャンルでは作業量が大変になることっていうのは事実としてあります。ただ、クラシック出身でずっとオーケストレーションの譜面を書いていたので、その作業量に比べたら大丈夫ですかね(笑)。

めた

別にどれだけ時間がかかってもいいと思っている自分がいるのと、締め切りで終わらせないといけない自分がいるので、そこは引き算で考えている部分もあります。ただ、いずれにしても大変っていう感覚はなくて、その曲を作るための必要な工程を踏みましたっていう意識でやっています。1週間だから大丈夫で、1カ月かかったから大変っていうんじゃなくて、その曲を形にするために結果としてそのくらいの時間がかかったっていう感じです。

作曲活動を通して大切にしていること

Tukkun

——作曲活動を通して大切にしていることって何でしょうか。

めた

先ほども言ったように、熱量があって順調にこの世界に来たわけじゃなくて、自分が楽しいし好きだった結果、この世界へ転がってきたっていうだけなんですよ。なので、人が私の曲を聴いて感動するかどうかっていうのはあまり考えていなくて、自分が飽きずに続けられるかどうかを結構大事にしています。どうしてもモチベーションが下がってしまう時期があるので、いかに音楽というものに対して驚きを持ち続けられるかっていう部分は大切にしています。

めた

UNISON SQUARE GARDENの田淵さんが、「徹底的に一人でやれ、音楽はいいぞ」っていう旨のことを言ってたんですよ。僕もそうだと思っていて、音楽と向き合う時には自分だけで判断して、結果として人も好きになってくれたり、感動してくれたりしたらそれはそれでいいよねっていう感じでやっています。だから、自分が一番楽しいと思えるのか、そう感じるのかっていうのは一番大切にしています。

Tukkun

——自分を突き詰めるということが大切になる時もありますね。

めた

他人の評価を軸にしてしまうと揺らぐ時があると思っているんですよ。そう思うのも、中学生の時に合唱コンクールで指揮者をやっていたんですけど、卒業後に後輩から「生原先輩の指揮を見て音楽の道に入りたいと思って高校で音楽はじめました!」って言われまして……。その時「うれしい」よりも先に「怖い!」って思ったんですよ。だって自分が好きでやってただけなのにその人の人生狂わせたかもしれないと思ってですね……。だからあんまり人がどう思うかっていうのは気にせずにやっていきたいなって思います。僕がいいと思っているものが必ずしも他人にとっていいものとは限らないですしね。

これからの活動や挑戦

Tukkun

——本当にいろいろ聞かせていただきまして本当にありがとうございました。ぜひこれからの挑戦と目標についても教えてください。

めた

音楽的な部分でいうと、自分の知らないことをやっている人が世の中にいすぎると思っていて(笑)。そういう思いを抱えているので、その人たちがやっているような技術とかを分析して自分のものにしたいなって思っています。自分が音楽に飽きないためにもっていうもありますけど、今やっていることに満足せずに、日常的にいいものを取り入れたいですね。そのための勉強は欠かさないようにしたいなと思っています。
そういう意味では最近ギターの練習に力を入れていまして、これもずっとやっていきたいかなと思っています。

Tukkun

——活動的な面ではどうでしょうか。

めた

自分がやっていて楽しいと思える人たちともっと楽しいことをするために、やるべきことをやれたらいいかなと思っています。商業でも同人でもやってて楽しいなって思えたらいいなって思っていますし、どんな道に行ってもそこで面白くなくなっちゃったら、音楽を辞めちゃうと思うので、楽しいっていう部分を徹底的に崩さずにやっていきたいですね。

皆さんへのメッセージをお願いします。

Tukkun

——最後に皆さんへメッセージをお願いします。

めた

自分の曲を好きだって言ってくれる人のことは、愛すべき赤の他人だと思っていますが、まずは本当にありがとうございます。感謝してますし、うれしいです。私も私の領域で一生懸命生きていて、あなたもあなたの領域で一生懸命生きてるだろうから、引き続き応援してくれている中で、交わる機会があったらよろしくお願いします。日々を頑張って生きてください。僕はそもそも表に出る人間ではないので表にいる人と比べて接点も少ないですし、今聞いてもらってる曲がずっと好きでいてくれるっていう保証もあんまりないと思うんですよ。それでも、どこかで聴いた曲を調べてみたら「あれ、この曲も作曲がめたなんだ」ってどこかで交差してくれたらお互いにハッピーかなって思います。

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