概要
VRChatで愛されるアバター「リアアリス」を主役に据えたアイドルプロジェクトが、2周年という節目を迎えた。記念すべきこのタイミングで、待望のオリジナル曲2曲をリリース。さらに、有栖川リアの声を担う小日向みくるの名前をはじめて公開するという大きな一歩も踏み出した。作曲家・めた、プロジェクトの生みの親・メアリ庵、そして小日向みくるの3人に、楽曲への思いとプロジェクトの現在地を聞いた。
プロジェクトメンバーについて

作編曲家 めた 氏
作編曲家・ギタリスト。バンド「休日のネコ」のギター担当を務めるほか、作編曲・Mix・レコーディングなど幅広く手がける。クラシックから商業ポップスまで横断してきたキャリアを持ち、メジャーアイドルの裏方経験もある。

VSinger 小日向みくる 氏
弾き語り系VTuber。ゆったりとした透明感のある癒やし系のギター弾き語り配信を行っている。不定期で配信を行うほか、作業や寝落ちのBGMとしても親しまれている。今回のリアアリスアイドルプロジェクトでは有栖川リアの声を担当している。

プロジェクトメンバー メアリ庵 氏
リアアリスアイドルプロジェクトのメンバー。プロジェクトの立ち上げに携わったメンバーで、『有栖川リア』の名付け親。企画ではMMD動画制作を担当している。VRChatのアバター文化を外の世界へ発信することを目指し、活動をけん引している。
インタビュー全文
オリジナル楽曲について
オリジナル楽曲『ありす・まじっく!』『In Dreamland』について

——リアアリスアイドルプロジェクトの2周年イベントを記念して、2曲の新曲が出ると伺いました。ぜひ新曲とプロジェクトについてインタビューをさせてください! さっそく楽曲について伺いますが、『In Dreamland』と『ありす・まじっく!』は、とても対照的になっていてすてきですよね。

実は元々2曲ぐらい作ってシングルにしようっていう話があったんですよ。その中で『ありす・まじっく!』が最初にできた形になります。そこから、これをリードにするってなった時に、やっぱりアバターアイドルの企画ではあるので、こちらは今風のアイドルソングにさせていただきました。最近のアイドルソングって、基本的にはEDMというか、電子楽器が中心で少し速めの曲が多いかなっていうところで、それに合わせた形で作っています。

『In Dreamland』については今回小日向みくるさんが歌ってくれるので、普段小日向さんがやっているような“弾き語り”にフォーカスできるように作っています。『ありす・まじっく!』みたいな似た系統で作っても良かったんですけど、生音楽器を中心にしたアコースティック感のある楽曲の方が『In Dreamland』のコンセプトに合うんじゃないかなと思ってアレンジを詰めさせていただいています。

——歌詞はいかがでしょうか。

今回曲を作るにあたっては、リアアリスっていうアバターそのものが『不思議の国のアリス』をモチーフにしているっていうことを、メアリさんから聞いたんですよ。それなら作品からインスピレーションを受けて書きたいなっていうことで、作品を読むところから始めさせていただきました。それで、『ありす・まじっく!』の方はアリス視点から歌詞を書いて、『In Dreamland』はアリスのお姉さん視点から見た世界を書いて、ここを対比させようっていうのは結構考えてやりましたね。
『ありす・まじっく!』の早口パート

——ちなみに『ありす・まじっく!』には早口になる部分も多くて大変だったと思うんですが、いかがでしたか?

正直に言っていいんですか?

いいよ(笑)。

めちゃめちゃ大変でした(笑)! 早口になる部分が3回ぐらい出てくるんですけど、何回も録りなおして、「これじゃだめだ……。これじゃだめだ……」ってなりながら録っていて、難しかったですね……(笑)。

——特徴的な早口パートだと思いますが、これはなぜ生まれたんでしょうか。

有栖川リアを見てくれている人って、第一にVRChatでリアアリスを使ってくれている方が多いんじゃないかなと思っています。第二には、僕らがやっている活動をVTuber音楽の文脈で見てくれる方もいるんじゃないかと思うんですよ。どちらにしても、インターネットの同人音楽を聴いてきた世代の方が多いんじゃないかなと思っているので、そういった文脈を詰め込めるだけ詰め込もうとした結果こうなりました。結構Bメロに早口とかラップパートを挟むのが今のあるあるだと思ってます。

あとはAメロとサビがゆったりしているので、Bメロで早口を入れたらかっこいいなと思ったのと、僕がUNISON SQUARE GARDENの大ファンなので、田淵智也さんのやり方が無意識に入ってきているのかもしれないです(笑)。
王道なアイドルソング

——アイドルソングという点では本当に王道な楽曲だと感じました。他の展開も考えられたと思うんですが、その点はいかがですか。

やっぱり第一には、王道のアイドルソングを作りたいよねっていう話があったのと『不思議の国のアリス』自体が歴史の長い、ある意味古典としての側面もあったので、穏やかさとか品のある感じの方向性にしたかったのがあります。
作詞も僕が8割ぐらい土台を作りましたけど、メアリさんとのやり取りでニュアンスを調整して、『不思議の国のアリス』に合わせるのか、リアアリスに合わせるのかっていう調整もさせていただいています。

でも音楽は専門外なので、めたさんのスキルとセンスにお任せしている部分が多かったですね。

でもその話の流れで、登場人物たちの歌が『きらきら星』をモチーフにしているっていうことも聞いたので、2番のAメロにちょっとだけそのモチーフを入れるなんてこともしてみました。

——随所に遊び心のある楽曲に仕上がっているわけですね!

私がメジャーアイドルの裏方をやっていたこともあって、いったんスタンダードな曲作りをしたうえで、聴く人が聴いたら“うなる”ような楽曲作りをずっとしていたんですよ。その影響もあったと思います。
それと、この曲を出したら絶対に言おうとしていたことがあるんですけど、リアアリスのアバターを使っている人たちって「りあ〜」ってあいさつをするらしいんですね(笑)。

そういう方もいらっしゃるみたいですね。

そういう界隈のあいさつもサビの頭に持ってきたら、アバターを使っている人が驚くんじゃないかなと思って、メロディーの長さを調整して「りあ〜」って聞こえるようにしてみるとか、いろいろな要素を入れさせていただきました。
とにかくアイドルソングって、届いた先のことを考えないといけないんですよ。みんなが聴いて、アイドルとそのファンに一体感が生まれないと意味がないので、そういう細かいギミックを各所に仕込ませていただいております。
楽曲ができての受け止め

——本当に細部までこだわりぬいた楽曲ですが、こちら受け取ってお二人はどう感じましたか?

本当にアイドルソングらしいと言いますか、明るく楽しく聴けるようなすてきな曲だなっていうのがまずありました。歌詞もアバターとか『不思議の国のアリス』に焦点を当てて作っていただいているので、すごいなって思ったのを今でも鮮明に覚えてます。
『In Dreamland』の方は全体の雰囲気がガラッと変わって、ちょっとおしとやかな、しっかり者の有栖川リアっていうキャラクターの二面性といいますか、解釈が広がるようなすてきな曲だなと感じました。

私も両方聴いた時に、リアアリスちゃんの世界観もアリスの世界観もしっかり出ている曲だなと思いました。『ありす・まじっく!』の方は明るい雰囲気で、「不思議の国に飛び込みました!」っていう感じでウキウキするし、歌っていてもとっても楽しかったです。『In Dreamland』の方は私の歌い方にも合うように作ってくださっていて、すごく歌いやすかったですし、歌詞も現実が垣間見えるような奥深い表現があって、すごく気持ちを込めやすかったなって思います。

——これらを聞いて作詞作曲者としていかがですか?

この曲を作るにあたって人生で初めて『不思議の国のアリス』を読んだんですけど、やっぱり読み継がれてきた文学ってすごいなって思ったんですよ。いつの時代に読んでも、読んだ人にとっての面白さがあると思っていて、これの正体ついて考えたんですけど、それって “共感”じゃないかなって思ったんですね。今回、アイドルソングだったっていうのもあって、“共感”を大切にした部分もあったので、お二人からそういった感想が出てきて作者冥利(みょうり)に尽きますね。
リアアリスアイドルプロジェクトについて
リアアリスアイドルプロジェクトの始まり

——楽曲について、いろいろ聞かせていただきましてありがとうございました。ぜひリアアリスアイドルプロジェクトそのものについても聞かせてください。

最初はめたさんと「こんなことができたら面白いよね」っていうところから始まりました。その中で、「どのアバターでやるか」という話をした時に、私の好きな『不思議の国のアリス』がいいヒントになるんじゃないかなと盛り上がったんです。

アリスって人によって魅力の変わるキャラクターで、ある人から見たら幼い少女だし、ある人から見たら憧れの人に見えることが魅力の一つだと考えています。これって、VRChatのアバターでも似たような側面があって、使う人によって見せ方とか見てもらいたい印象っていうのが変わるので、ここに物語との親和性を感じました。それに、リアアリスも作者である有坂みとさんの『不思議の国のアリス』のアリス像を再解釈して作られたものだと思うんですよ。こんな感じでいろいろな要素が合わさって、リアアリスで企画を進めようってなりました。

——小日向さんはこのプロジェクトについて聞いた時、どんな印象でしたか。

私も皆さんと同じように面白そうって思ってやろうっていう感じでしたし、それに今まで人と一緒に何かをするっていうこともなかったんですよね。あとは、VRChatで使われているアバターを外に向けて発信するっていうような挑戦も、考えたことがなかったので、面白そうだなっていう印象でした。

——確かにVRChatの文化って地産地消されているイメージがあるので、それを外に向けて発信していくのは面白そうですよね。

おっしゃるように、VRChatってVRChatの中に向けてコンテンツを作っているじゃないですか。誰かが「VRChatは終わらない放課後」って表現していて、これを的確だと思っているんですけど、せっかくなら外の人にもこのアバター文化を知ってほしいと思ってます。それこそ、アバター一つ取っても、美少女になる人もいれば、ロボとか、動物とかになる人もいるわけですよね。そこからさらに「アイドルまでやる人がいるのか」ってなったら、さらにいい形でアバター文化を面白くできるんじゃないかって思ってました。

メアリさんはどうですか。

2年前からこのプロジェクトが始まったんですけど、当時のVRChatってインターネット黎明(れいめい)期の混沌(こんとん)とした部分に似た雰囲気がYouTubeとかSNSで特に目立ってたんですよ。今でもある程度ありますけど、当時は特に多かった印象なので、もう少しキラキラした自由な世界を発信していけたらいいなっていうのがありました。
有栖川リアの中の人を公開することについて

——今回、週年イベントと合わせて有栖川リアの中の人である小日向みるくさんを公開するということになりましたが、どういったきっかけがあったんでしょうか。

こういう活動をしていることを知ってもらえたらうれしいっていう思いがまずありました。

あとは結構ニッチなことをやっていて、人を呼びにくいっていう問題もあったんですよ。そういう中でもっとたくさんの人に見てもらいたいし、そのための努力はしたいよねって3人で話し合っていたんですけど、それなら周年のこのタイミングで小日向さんのリスナーさんにもこっちを見てもらったらいいんじゃないかってなったんですね。

やっぱり私は声として関わらせていただいているので、名前を明かさないことで、見てもらえないのはもったいないって感じていました。

そもそも中の人を明かさないってしていたのは、あくまでも有栖川リアとして活動をしてほしかったので、中の人の活動に引っ張られるのを懸念していたんですよ。でも、この3人で活動を続けていく中で、そういった懸念も杞憂(きゆう)かなと共通認識ができたので明かすことになりました。それに、それぞれのリスナーさんが交流してくれるのもいいし、小日向さんとしても、自信を持って出しているコンテンツなので、小日向ファンにも見てほしいっていう思いがあったんだよね?

めちゃめちゃ言語化が上手。その通りです! ありがとうございます!

——ここまで進んできたからこそ、名前を明かすという到達になったんですね。

3人がそれぞれのスキルを持ち寄ってできる活動ってことです。やっぱり、小日向ファンの人たちに全く他の活動を知らせないのって悲しいじゃないですか。それに、向こうにしてみたら、「推しの歌みたとオリ曲がめっちゃ増えた!」ってことにもなるので、むしろ良い効果の方が大きいんじゃないかなって思ってます。

これまでと変わることはないと思うので、今まで通りリアちゃんはリアちゃんで、小日向は小日向でやっていこうっていう感じです。リアちゃんにはリアちゃんの世界観があるので、それぞれの世界観できっと違ったものが見えると思いますし、他にもいろいろなことをやっていこうかなって思います!

プロジェクトで会議をしてると「これ小日向さんには会うけど、リアちゃんには合わないな」っていう曲が結構あって、却下になることが多いんですよね。

あります! あります!

なので、それぞれの世界観がぶれるっていうことはないので安心してください。
みなさんへメッセージ
プロジェクト2周年のメッセージ

——今回のオリ曲、またプロジェクト2周年についてぜひメッセージをお願いします。

有栖川リアの活動が始まって2周年の内に、リアアリスの周年イベントにも去年呼んでいただきまして、そういった形でリアアリス界隈の方ともつながりができてきました。その中で音源もずっと発表してきて、今回オリ曲という形で出せましたので、作った側(がわ)としては、聴いてくれた人たちに愛される曲になっていけばいいなというところです。しかも周年で出せるっていうことに関しては、僕の好きな作曲家が「音楽は思い出をアーカイブするものだ」って言っていて、そういう文脈で、聴いてくれたいろいろな立場の人がこの瞬間を良いものだったなと記憶してくれれば、それが一番かなと思います。

2周年という一つの区切りとして、ここまで来たんだなという気持ちと、まだまだ道半ばという気持ちがあります。今回のオリ曲もそうなんですけど、このリアちゃんの活動でやりたいことって、皆さんとたくさんお話してるんですよ。今立っている2周年もこれから挑戦していくステップの一つだと思って、みんなから愛されるような有栖川リアを作って広げていけたらいいなと思っています。

やっぱり中の人を明かすことによって、びっくりする人がいるかもしれないんですけど、それでもみんなに応援してもらえるように、引き続き頑張りたいと思っています。
ファンの方々へメッセージ

——最後にファンの方々へメッセージをいただけたらと思います。

どういった形であれ、有栖川リアのことを見つけてくれた皆さん! ありがとうございます。VRChat外の人も、VRChat内の人も、リアアリスを使っている人もそうでない人もいると思いますが、リアアリスはかわいいということで、これからも有栖川リアの活動を応援していただけると嬉しいです。ぜひよろしくお願いします。

いつも応援ありがとうございます。有栖川リアは本当に皆さんに愛されてここまで活動を続けられました。これからも、有栖川リアをはじめリアアリス、『不思議の国のアリス』の魅力をもっと知ってもらえるように努めてまいりますので、これからも応援よろしくお願いいたします。

いつも有栖川リアを応援してくれてありがとうございます。中の人が公開されてびっくりする方も多いと思いますが、これからもリアちゃんはリアちゃんで何も変わらないので、これまでと変わらず楽しんでもらえたらうれしいです。今後も楽しいことや面白いことにたくさん挑戦して、いろいろな人に見つけてもらえるように頑張ります! これからも応援よろしくお願いします!