ツクヲサキ氏について

Vsinger ツクヲサキ 氏
「音がなかったら生きていけなかった」――そう語るのは、音楽工房「月ノ音」でVSingerとして活動するツクヲサキさん。コロナ禍の苦境、身内の危篤、そして自信の喪失――そうした経験を経てもなお「音と活きる」道を選んだ彼女に、音楽への思いと創作の核心を聞いた。
インタビュー全文
音楽との出会いについて

——音楽工房「月ノ音」で音楽作家、VSingerとして活躍されているツクヲサキさんにインタビューができて大変光栄です。早速ですが、音楽との出会いについて教えてください。

ちょっと私は覚えてないんですけど、小さい頃にキーボードの小さいおもちゃをずっと触っていたようで、それがリズムパターンとかエイトビートの流れる機能が付いていたんですね。それを親が適当に流したら私が「エイトビートだねとか、ワルツだね」とか覚えていたらしくて、それをきっかけに音楽教室に通ったっていうのが出会いですかね。

——すごい! 作曲に触れ始めたのはいつぐらいだったんでしょう。

そうですね。音楽教室で習った曲とか、テレビでかかっている曲をメドレーみたいな感じにして歌うっていうところから作曲は始まっていたのかなと思います。物心付いた時からは、「瓶のふたが開かないの曲」とかそういう鼻歌を歌っていました(笑)。幼稚園に通い始めたぐらいの時には、もう少し大きい電子ピアノを買ってもらったんですけど、弾き方を教えてもらって、そこから好きなメロディーを自由に奏でていたそうです(笑)。
なので、いつから作曲をしていたかっていうとすごく説明が難しいんですよね……。

——本当に最初から音楽が体の一部になっていたような、音楽と共に生きてきたイメージですね。

本当にそうだと思います。配信終わりに「音と活きやがれ!」っていうあいさつをしているんですけど、本当に音がなかったら生きていけなかった人生だったなと思います。
音楽を活動に

——そういった中で音楽を活動にしようと思ったのはいつからなんでしょうか。

音楽の活動を始めようと思ったきっかけは高校時代ですね。担任の先生が背中を押してくれたのがきっかけで専門学校に通いました。普通だったら「大学行った方がいい」とか「音楽で食べていける人間は一握りだ」っていう話になると思うので本当にありがたかったです。

それこそ高校に入ってからは演劇部をやっていて、劇伴を作ったりとか学園祭でステージに立たせてもらったりしていたので、それを先生がずっと見ていてくれたんですよ。なので、進路相談の面談で「もし本気で音楽の道に進む気があるんだったら、俺はどんな協力でも惜しまないぞ」って言ってくれたんですよね。

——とても心強い味方でしたね。そこから本格的にDTMを学んでいったんですね。

そうですね。専門学校でがっつりDTMを学びまして、音楽制作事務所さんにも少し勤めていたことがあったので、お仕事でもがっつり鍛えられたかなって思います。地元でもライブハウスで演奏をしたり、アーティストさんへの楽曲制作をしたりしつつ、劇伴制作もしていました。
VTuberの世界へ

——本当にがっつり音楽制作をされていたんですね! そこからこのサブカルの世界に入るきっかけって何があったんでしょうか。

ちょうどコロナ禍をきっかけにライブハウスでもライブができなくなって、私自身もちょっと活動を休止させていただいたんですね。そこから、仮想世界に精通する人や、Live2Dに詳しい人とのご縁があったのと、「自分の音楽にはまだまだ力があるんだ」っていう自信を取り戻せたエピソードがあって、VTuberとしてデビューしたっていう感じです。
自信を取り戻したきっかけ

——そのエピソードについて伺っても大丈夫ですか。

ぶっちゃけ、自分の音楽って人には受け入れにくいものなのかなって自信をなくしていたということもあったんですよ。そんな中で、コロナ禍で身内が危篤状態になってしまって、遠くに住んでいたのですぐにお見舞いにも行けないし、いつその時が来てもおかしくないっていう状態で……。

なので、せめてLINE通話で以前好きだって言ってくれた曲を演奏したんですね。その曲も認知症が進んでいた中でも覚えてくれていた曲なんですけど、それを通話で弾き語りして聴いてもらったら、通話をしていた時には本当に意識ももうろうとしてて何もしゃべれなかったのに、ずっと一緒に歌っててくれたみたいなんですね。

私は歌っていたので気が付かなかったんですけど、付き添いの人が泣きながら教えてくれて。本当にいつその時が来てもおかしくなかったんですけど、半年も生きてくれたみたいで音楽には力があるなって実感しました。そういう力のある音楽って、メジャーデビューした人たちみたいな一握りの人だけかなって思っていたんですけど、自分の音楽でもそういうことができたのかなって思います。
曲作りについて

——つらいことも語っていただいてありがとうございました。曲作りについても伺っていきたいんですが、楽曲を作る時の順番ってあるんでしょうか。

まず、私は作曲する時に一切譜面を起こさないんですよ。仕事上使うのである程度は読めるんですけど、頭の中に浮かんだメロディーラインをDAWにたたき込む感じですね。

——とてもメロディーラインがキャッチーだなと感じています。

メロディーラインに関しても鼻歌から作っていくので、その鼻歌が気持ちよく歌えて、耳に残らないとメロディーラインとしては成り立たないって思っているからですかね。そうしないと忘れちゃうので……(笑)。それでも、「ツクヲさんの曲難しい」って言われることもあるんですけど(笑)。少なくとも自分で歌っていて気持ちいメロディーをそのまま曲に起こしています。

——マイナースケールの楽曲も多い印象でしたが、いかがですか。

曲の中で伝えたいことを表現するには、マイナースケールの方があってるって感じることが多いからですかね。ただ、音楽理論とかもよくわかっていないので、本当に気持ちのいい進行をなぞっている感じになります。
オリジナル曲について

——一番初めのオリジナル曲である『MONO-logue』はかなり変わった音使いでしたが、これにはどういう意図があったんでしょうか。

これに関しては、気持ちがいいというより、意図的に変わった音作りをした楽曲になります。わざと耳に付くというか、ちょっとうるさいかなって思われる曲をチョイスしています。あとは「物」が主体の楽曲なので、人のぬくもりがないような冷たい感じとか、あえて人の気持ちとか揺れ動く心境を表現しないようにしました。生音のピアノもピッチがゆがんでいるんですけど、ラスサビ前にゆがみを戻して主人公が「僕も捨てられたんだよ」って告白するシーンを表現しています。

なので、音作りには感覚も影響されているんですけど、曲中の物語とかキャラクターの心情にも影響を受けていますね。

——オリジナル曲を聴いていくとかっこいい曲から、最近では幻想的な楽曲に移っていくように感じられました。そこにツクヲさんのやりたいことをもう一度やりたいという気持ちを感じました。これについてはいかがですか。

確かに最初から中盤にかけての曲は活動がうまくいってなかったんですよね。そこからもう一度立ち直ろうとしていたので、それが音になったのかなと思います。幻想的な世界の物語というよりは自分自身の心情をモチーフにして書いた曲が多いので、ファンタジーな感じにはならなかったんだと思います。

そこからいろいろな方との出会いとか支えとかがありまして、中盤以降は私自身にも変化があったり、余裕が出てきたりしたのでいろいろな曲を作った経験を携えて、もう一度作りたいジャンルの曲を作ったらどうなるのかっていう感じではありました。一番新しい楽曲の『月夜に満ちる夢想曲』はナナシのゴシック!さんっていうサークルさんとのコラボで作らせていただいたもので、それこそこれは幻想的な楽曲になっています。
作曲のルーツについて

——そもそもルーツとしてはどういった楽曲を作っていきたかったんでしょうか。

私のルーツがRPGゲームの音楽だったんですよ。『ゼルダの伝説』とか『FF』とか『ドラクエ』の音楽が好きだったので、そういうジャンルを絶対作ろうって生み出したのが、音楽工房「月ノ音」でもありました。

——そうだったんですね!

単純に小さい頃からゲームが大好きだったので、好きなゲームの音楽はそのまま好きになってました(笑)。あとは学校生活がうまくいかなかった時期もあって、人の声が乗った曲を聴きたくなかったんですよね。悪い言い方をすると、現実逃避のできるよりどころとしてゲーム音楽があって、その世界に浸っていられるので自分も作りたいなって思っていました。
どう聴いてほしいか

——そういった思いや背景を踏まえて自身の曲をどのように聞いてほしいなどあるでしょうか。

あんまりこう聴いてほしいとは強く言えないんですけど、欲をいえば歌詞のない曲とかは、どこにいるのか、どんなシーンなのかっていうのが映像として浮かびあがってもらえるとうれしいなっていうところがあります。

歌詞のある曲は、伝えたいことを書いているというより、勝手に叫んでるイメージなんですけど、「どう思います?」って思って書いているので、「共感しました」とか「そういう意見もあるか」とか「面白いな」とかって思ってくれてもうれしいですね。
曲や歌詞を書く時に大切にしていること

——曲や歌詞を書く時に大切にしていることを教えてください。

ひどいとか矛盾した感情ほど素直に前へ出すようにしています。例えば『口虚月』っていう曲の歌詞であれば「ひとがきらい」なのに「ひとりがきらい」って言っていて、こうやって矛盾があるんですね。でもこうやって一貫性のない部分が人間だと思います。あとは、私ちょっと目が悪くて、みんなが当たり前のように見ているものが見えないことが多いんですよ。

でもそれって、逆に自分だけの世界が見えていて、それに対して自分の解釈を持っているっていうことだと思うので、あんまり自分の曲を「はやり廃りに染めず、矛盾したままにしておくことが自分を大切にすることだと思っています。
今後の目標

——本当にいろいろ聞かせていただきましてありがとうございました。ぜひ今後の目標や挑戦について教えてください。

自分に正直でありたいので、ちょっと強めに毒を吐く曲を増やしたいなと思っています。今までの楽曲っていうのは、自暴自棄だったり、助けてっていうの訴えたり、追い詰められた状態での叫び声が多かったんですよ。

なのでそうなる前に「このやろう」とか「ばーか」って言える状態の曲を作りたいです。昨今いろんな場面で、「あれ言うな」「これ言うな」って言われて気を使うことがみなさん多いじゃないですか。そうなってくると、普段から気を使っている人がますます気を使っちゃうなって思うので、そういう方々がスカっとするような場所を作りたいですし、私も欲しいという願いがあります。

——こんな曲に挑戦したいなどあるでしょうか。

私ジャズが好きなんですけど、作るのがすごく苦手で時間もかかるし、かっこいいフレーズにも時間がかかるので、ジャズを勉強したいなって思っています。

——こんなところが課題だなと感じる部分はあるでしょうか。

メロディーがワンパターンになってしまったりとか、生ドラムのフィルインに引き出しが少ないんですよね。ピアノはこれまでやってきたのでなんとかなってるんですけど、オルガンとかになると引き出しが少なくなるので、こういったところを補えたらいいなと思います。

——活動的な部分ではいかがでしょうか。

あんまり数を気にしないで活動をしてきたんですけど、いろいろなご縁がある度に「チャンネル登録者と技術が釣り合ってない!」って言っていただけるので、それだけ評価をしてくれている人がいるんだって自信になってきたんですよ。なので今年の11月で活動5周年を迎えるので、そこまでに1000人いけたらいいなと思っています。
みなさんへメッセージ

——最後に皆さんへメッセージをお願いします!

見ていただいている方々には引き続きマイペースに音と活きているツクヲサキの活動をこれからものぞいていただけたらうれしいです。それと、配信や楽曲で音を彩るお手伝いもさせていただいておりますので、お力になれることがあれば音楽工房「月ノ音」までご依頼をお待ちしております。
あとは人のお金で焼き肉が食べたいです!
関連リンク
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