春雲とい氏について

作曲家 春雲とい 氏
Instagramで多くの方に使われたオリジナル曲『tututu』の作曲家として知られるフリーランス作曲家の春雲とい氏。カワイイフューチャーベースを軸に作曲だけでなく作詞も自ら手がけ、一つひとつの音や言葉に物語を込めた楽曲を生み出し続けている。幼少期のピアノとの出会いから、Snail’s Houseとの出会いによる作曲への目覚め、そして自身の音楽について、じっくりと語ってもらった。
インタビュー全文
音楽・作曲を始めたきっかけ

——かわいい楽曲の制作をベースに活動されているフリーランスの作曲家、春雲といさんにインタビューができて大変光栄です! 早速ですが、音楽を始めたきっかけについて教えてください。

最初の出会いというか、きっかけは幼稚園生の時だったんですけど、先生がお歌の時間でピアノを弾いてるじゃないですか。それがかっこいいと思って、お母さんにピアノを習いたいみたいなことを言ったのが最初だったんじゃないかなと思います。習う前からアップライトピアノが家にあって、おもちゃとして遊んではいたんですけど、ちゃんと習ってやり始めたのがそのぐらいです。そこから中二の終わりぐらいまでピアノをやってましたね。

——そうだったんですね。作曲をやり始めたのはいつぐらいだったんでしょうか。

ピアノをやってるうちに好きな曲を耳コピして遊んだり、アレンジしたりするようになって、そのまま吹奏楽部に入ったこともあったんですけど、一番はSnail’s Houseさんっていうアーティストさんの曲を聴いたのがきっかけです。最初は耳コピの延長でGarageBandを使ってたんですよ。そこからいろいろ調べていくうちにSnail’s Houseさんみたいな曲ってDAWを使えば作れるんだっていうのを知ってから「頑張ったらこれ作れるかも」みたいに思って勉強しだして、20歳ぐらいになってからちゃんと作れるようになりました! GarageBandから1回LogicProっていう似たDAWにいって、今はAbleton Liveっていうのを使ってますね。
音楽を活動に

——趣味ベースでずっとやられていたということなんですが、それを活動にしようと思ったきっかけって何だったんでしょうか。

最初、DAWをいじってる時は一人になれるみたいな感じがあって、現実逃避みたいな感じでやってたんですよ。でも、自分のためじゃなくて、もっと広く聴いてもらいたいなっていつの間にか思うようになって、そこから作曲を活動にしましたね。20歳ぐらいの時にそう思うようになったんですけど、そのちょっと前に病気になっちゃって、会社を辞めたんですよ。なので、ここからは頑張ってる趣味っていうよりは、もっともっと頑張ってお勉強してお仕事にできるぐらいにしたいなっていうのを考えるようになったっていうのもありますね。それに、曲を作ったり、詞を書いたりすることで誰かの表現のお手伝いをしたいなって思うようになって本腰をいれたっていうのもあります。

——Snail’s Houseさんから一番の影響を受けてると思うんですが、カワイイフューチャーベースに焦点を当てて曲を作っている理由についても聞かせてください。

結構いろんなところに興味がいっちゃいがちなので、キュートコアとかボタニカっていうようなジャンルにも手を出したこともあったんですけど、結局カワイイフューチャーベースが一番制作スタイルに合っているし、好きだなっていうのは思っていますね。
楽曲について

——やっぱりキャッチーなメロディーラインが印象的ですが、こだわりはありますか。

こだわりっていうこだわりはないんですが、歌いながら作っているので歌ってて楽しいっていうのは大事にしてます。あとは、歌詞とメロディーラインを同時に作っていることが多いので、その歌詞に合うような、その言葉がうまく伝わるように作っている節はありますね。順番でいうと、トラックを作ってから、歌詞とメロディーを作るような感じになっています。
なので作り始める前に大体のコンセプトとか、伝えたいことを決めておくので、短編小説みたいなのを書いてトラックを作ることもありますね!

——作曲と同時に作詞もやられているのがすごいですよね。結構詩的な感じも受けます。

本を読むのがずっと好きで、いろんな本の中でも短歌とか歌人さんの本をよく読んでいました。だからいろいろな言葉を使いたい、使いこなせるようになりたいみたいにずっと思いながら活動していますね。
詩的な感じを受けるのは、短歌を書く人にすごく憧れがあるので、そういうのがにじんでいたのかもしれないです。遠まわしすぎて何言ってるかわからなくなる時もあるんですけど、そういうのが好きなところもあるので、しょっちゅうそんな感じで書いております(笑)。

——音数が少なくても楽曲として成り立たせているところに技を感じましたが、ここはどうでしょうか。

音を引き算しているつもりはなくって、あんまり自分でいうのもあれなんですけど、まだ作曲の技術が追い付いていないというか、技術がないような気がして、まだ音をたくさん使えないっていう感じですね……。なので、音数を増やしてもごちゃごちゃにならないようなMIXを勉強している最中です! 本当は音をたくさん使いたいなって思ってるんですけど、いろんな音を管理しきれなくなっちゃうんですよ(笑)。MIXもやりきれなくなっちゃうので、少なくなってる節もあると思います。

あとは、曲の中で「今はなんの音が目立つべきなのか」っていうのを考えつつやっているっていうのもあるかもしれないですね。音作りの中でレイヤーの仕方だったり、MIXの仕方を工夫したりして、音の質量を増やすことで音数が少なくても空間を埋められるようにっていうのは最近やり始めてもいます。歌に関してもハモりを増やしてみるとか、トラックがシンプルな時は歌詞の文字数を増やしてみるとかいろいろやってる気がします!

——曲の展開についても聞かせてください。『星の子通信』では意味のある終わり方をしていて驚きました。

少しずつバグっていくような演出ですね! でもその辺りから終わらせ方に関して考え出した気がします。終わり方にも物語を持たせられたら曲全体の印象も変わってくるかなって言うのは考えていて、おっしゃっていただいたように『星の子通信』は物語強めなので、あんな感じで終わらせました。

——いわゆる楽器じゃない音も使っていますし、一つひとつの音にもやさしい感じを受けるんですが、音選びに対するこだわりについても聞かせてください。

音選びに関しては、その曲のコンセプトに合わせたようなものを選ぶようにはしてるんですけど、私自身が音に過敏気味なところがあるので、自分で聴いていて不快じゃないように選んだり、作ったりとかしている部分はあるかもしれないですね。最近、音を加工する勉強をしたので、その音のままだと嫌だなって時に、どの辺りが不快なのかを割り出してそこだけ取り除くみたいな細かい作業をしています。あとはわざわざ不快になるようなホワイトノイズみたいなのを一瞬入れると暗いイメージになるかなと思ってあえて使うこともあります。

楽器じゃない音に関しては、物語の1個になるかなっていうのは思っていて、そういう音って生活の中で出てくる音じゃないですか。スイッチの音とか踏切の音とか。そういう音を聞いた時にそれを聴いた時の気持ちみたいなものが自然と思い出されるような気がするんですよね。そういう意図があって使っています!
『tututu』について

——春雲さんといえば、Instagramで大バズりしたオリジナル曲の『tututu』が代表作のようになっていますが、この楽曲が生まれた背景についても聞かせていただけますか。

実はあの曲を作った時期っていろいろなことがうまくいかなくて、曲を作ることも嫌だった時期なんですよ。本当は曲も作りたくないけど、活動はしたいしみたいな……。そんな感じでスマホをいじりながら部屋で転がってたら、めったにそういうことないんですけど、みんなが一番使ってくれている最初のメロディーが頭に浮かんだんですよ。「これは曲にしよう!」ってすぐにメモして、それに肉付けしていく形で他の部分を作ったような感じですね。
ちなみに歌詞を作るのも嫌だったから「トゥトゥトゥ」でいいやって歌詞も作って、MVも依頼する元気がなかったので、Blenderで作るみたいな感じでした。

本当にそんな感じで当時は曲作りをしたくなかったので、音数も少なかったし、できたから出したっていう感じで自信はない曲でした……。装飾も少ないし、MIXもちゃんとやってないし、全体的にちゃんと作業できた感じじゃないので、発表してから1年ぐらいでインスタを中心に使われだしてびっくりでしたね……!
自分の中の評価と周りがいっぱい聴いてくれるかどうかっていうのは全然別なんだなっていうのを思い知った出来事ではありました。でもとってもうれしいですね!

——なによりかわいいを中心に活動している春雲さんの曲がかわいいものを紹介する動画に使われているのが良かったですよね。

最初に海外の方が使ってくれたんですけど、小さい子どもがかわいいから撮った動画なんだろうなっていうのがわかりましたし、ワンちゃんとかハムスターの動画が多くてすごいうれしいですね。
活動全体を通して大切にしていること

——ぜひ活動全体を通して大切にしていることを聞かせてください。

世の中しんどいことばっかりではあるんですけど、その中でも自分なりに好きなものだったり、気に入るものだったりって絶対あるので、そういうのを拾って大切にしていきたいって考えてるんですよ。わがままかもしれないんですけど、誰か一人でもいいので、その気に入ったものの1個に私の作った何かが入れたらいいなって思ってます。スケールが大きいかもしれないんですけど、好きなものとか気に入るものはあるよっていうのを伝えたいですね。
今後の目標や挑戦

——本当にいろいろ聞かせていただいてありがとうございます。ぜひ今後の目標や挑戦についても聞かせてください。

もっとMIXを勉強したいなっていうのはあって、ここがまだ途上にあるので音作りも含めて勉強したいなっていうのがあります。

あとは、カワイイフューチャーベースをもっともっと極めていきたい気持ちもありつつ、近いジャンルのキュートコアとかナイトコアみたいなものもやっていきたいなと思っております。一方で、やさしい音使いについて聞いていただいたんですが、一見不快な音というか、治安が悪い音みたいな……? そんな音を使ったダブステップとか他のジャンルにも挑戦したい気持ちがありますね。やさしい曲も好きなんですけど、強い音とかわいいを掛け合わせたらいい感じになるんじゃないかっていうのを最近よく思っているのでゴリゴリにいきたいですね(笑)。

——活動的な面ではどうでしょうか。

私って多趣味なのですごく多いんですけど!

——むしろ話していただければうれしいです(笑)。

とにかくいろんなものを作りたいっていうのがあるんですよ。サークル名を星の子通信局でやってるんですけど、曲はもちろん、その曲の中で語っている物語とか、世界観に合うような言葉とかグッズも作りたいですね。あとはDJの知り合いさんが多くて、勧められて機材も買ったので練習してイベントに出られたらいいなって思ってます。

あとこれはどこにも言ってないんですけど、ユニットを準備しておりまして、他のクリエイターさんと一緒に制作中なんですけど、これはまた個人製作とは全然雰囲気を変えてやるので、自分でもすごい楽しみです。それと、リアルもバーチャルも問わず、アイドルさんに曲を提供したいですね。

音っていうところだと、プラグインを作りたいですね。声とか音をかわいい感じにできたらいいなって思っていて、配布なり、販売なりで出したいです! さすがにプログラミングの領域になってくるところもあるので、だいぶ勉強しないといけないんですけど……!
もういろんなことをしたいです! やりたいこと多すぎて楽しいですね!
皆さんへメッセージ

——最後にメッセージをお願いします。

この質問は事前に聞いていたんでいろいろ考えて来たんですけど……。
私はこれからも頑張っていろんな曲だったり、作品だったり、世界観だったりを作っていくので楽しんでください!

っていうことだけしか思いつきませんでした(笑)!