ぼいどす氏について

ご紹介

作編曲家 ぼいどす

「音質だけはどこにも負けない」——そう語るDTMerぼいどす氏の楽曲は、ドラムもベースも生々しさにこだわる音作りが特徴。音楽が苦手だった少年時代から、社会人バンド、そしてAIきりたんとの出会いを経て今に至るまでの歩みと、楽曲制作にかける想いをインタビュー。

インタビュー全文

音楽との出会い

Tukkun

——DTMerとして活動されているぼいどすさんにインタビューができて光栄です! さっそくですが、音楽との出会いやエピソードについて聞かせてください。

ぼいどす

実は子どもの頃音楽が苦手で、音楽の授業も憂鬱(ゆううつ)な気分で過ごす小学生だったんですよ。でも、当時『マリオペイント』っていうゲームソフトに打ち込み機能があって「機械で音楽やるの面白いじゃん」って思ったのがDTMを始めたきっかけですね。幸いなことに家にカシオトーンがあったので、『マリオペイント』で遊ぶようになってから、右手でメロディーを弾いて遊ぶようにもなりました。弾けるっていうほどではないんですけどね。

Tukkun

——カシオトーンがあったということはご両親も音楽をやられていたとか?

ぼいどす

それが全くないんですよ。だから、両親どちらかが音楽をやっている人たちは強いなと思いますし、うらやましいなと思っていますね。

Tukkun

——それ以降についても聞かせてください。

ぼいどす

それ以降でいうと音楽の教科書って後ろに楽典が載っているんですけど、そこでコードの仕組みとか簡単な理論を自分なりに読み解いていった感じになります。同時に、それを実践するために左手でベースを弾いて右手でコードを弾いてとかやっていたら、自己流なんですけどピアノが両手弾きできるようにもなっていました。

Tukkun

——そこまで勉強に突き動かしたモチベーションはなんだったんでしょうか。

ぼいどす

はやりの曲の楽譜とかふと聴いた曲を打ち込んで、それを『音楽ツクールかなでーる』で再生する瞬間が楽しくてやっていました。なので、作曲をするっていうような考えは当時あんまりなかったと思います。

本格的な作曲へ

Tukkun

——本格的な作曲はその後だったわけですね。

ぼいどす

そうですね。やっぱりゲームだったので、音数を増やすとすぐ容量がいっぱいになっちゃったり、そもそも3曲しか保存できなかったりとかの制約がきつかったんですよ。なので、高校生ぐらいの時にはそうとう不満がたまっていました。そんな時に、キーボードの雑誌を見ていたらパソコンで音楽が作れるっていうのを知って、その頃から「パソコンが欲しい、DTMやりたいな」なんて思い始めました。

ぼいどす

それと同時に、高校に上がったタイミングで「作曲のためにも音楽の知識をもうちょっと身に着けたいな」と思って吹奏楽部にも入りました。遅く音楽の世界に入ったにもかかわらず、同級生と先輩たちは今思うと結構優しくいろいろ教えてくれたなと思っています。コンクールとか野球部の応援も結構きつかったんですけど、何も知らなかったからこそ乗り越えられた部分もあると思います。吹奏楽の強豪校でもなかったので、厳しい指導もなくのびのびできたので良かったなと思いますね。

Tukkun

——音楽に対してかなり真摯(しんし)に向き合ってますよね。

ぼいどす

スポーツとかが苦手だったので、今思えば当時生きづらさを感じていたんですけど、音楽との出会いがあって「音楽があれば生きていける」って感じて、音楽への思いを強めていったんじゃないかなと思います。

活動者になったきっかけ

Tukkun

——ずっと現実世界で音楽活動をされていたと思うんですけども、ネットで活動をするようになったのはいつからなんでしょうか。

ぼいどす

いろいろな経緯があるんですけど、まず20代前半から15年ほど社会人バンド(パートはキーボード)を趣味でやっていたんですよ。たまたまバンドのつながりで制作会社の社長さんからCM曲を何曲かご依頼いただいて、そこでいくつか作曲をするようになったのがお仕事のご依頼を受ける始まりだったと思います。

ぼいどす

そこから2017年ぐらいだったんですけど、同じぐらいの時期にTwitterで仮想通貨のアカウントをやり始めつつ散発的にカバー動画などをYoutubeにあげていました。今ほどネット上で音楽活動をやっていたわけではなかったんですが、2020年あたりはにじさんじさんやホロライブさんからご依頼をいただくことがあって、オケを納品させていただいたんですね。そこで、「もしかして趣味をマネタイズできる?」って思ったのが現在の活動のきっかけだったと思います。

Tukkun

——活動をしようと思って活動を始めたわけではなかったんですね!

ぼいどす

腕が落ちないようにYouTubeに音源も上げつつ、ご依頼も受け付けてますっていう風にやっていたら、ご依頼が来ていたっていう感じなのでプロミュージシャンになるとかっていうのは考えてなかったですね。今でも趣味のつもりなのでプロフィールには“アマチュアミュージシャン”って書いてあります。
あとは、仮想通貨アカウントをやっていたっていうのもあって、バーチャル美少女ねむさんの企画に参加したり、おきゅたんbotさんやジビエーズさんに出会ったりしたので、そういうのがなかったら違うネット人生を歩んでいたかもしれないですね。

オリジナル楽曲について

Tukkun

——楽曲についてもぜひ聞かせてください。積極的に『AIきりたん』を使われていますよね。

ぼいどす

2020年の2月に『AIきりたん』が発表されて「リアルな人間の声に聞こえる」って衝撃を受けまして、使い続けて6年目になります。実はボーカロイドが得意ではなくて、その辺りのジャンルをすっとばしているんですよ。
『AIきりたん』を使うようになってから、ボカロPを名乗ることもあったんですけど、SNSでフォローしてくれる人って純粋にボカロが好きな人たちなんですよね……。でも「この人たちが好きな楽曲は提供できない……」と思って1年ぐらいでボカロPを名乗らなくなった経緯もあります。

楽曲の展開やメロディーについて

Tukkun

——オリジナル楽曲を聴かせていただきましたが、楽曲の展開にかなり幅があって聴いていて飽きない作りになっているなと感じました。

ぼいどす

ありきたりを避けたいっていうのは考えているので、ちょっと面白いことをやってみようっていうのは毎回考えています。最近はAIに10曲ぐらい出力させてアイデアをもらうなんていうこともしています。でも基本的にはAメロとサビは必要っていうような考え方でやってますね。昔作った『リコリスの空』『二人の罪』なんかはAメロとサビだけで作っているような作品なので、私の歌物に関してはAメロとサビが最低限の構成になってますね。他には『遠い夏の空と君と』に関してはイントロが2種類あったり、2番のAメロBメロの間に別の展開が入って冷たさを感じさせたり、そういうようなこともやっています。

Tukkun

——メロディーラインも聴きやすいものが多いなと感じました。これに関してもこだわり等を教えていただければありがたいです。

ぼいどす

メロディーは聴きやすさだとか耳障りの良さとかをとにかく考えてますね。ただ、『夜明け前の夢のシナリオ』っていう曲は例外で、まず人間が歌うことを想定していないメロディーで作ってるんですよ。この曲は聴きやすさがありながら歌ってみたらすっごく歌いにくいみたいなものを作りたかったっていうのがありまして、Bメロなんかは息継ぎのないメロディーになっているので、機械ならではという感じになってますね。リリース後に甘野氷さんとorbi子さんのカニーズっていうユニットで歌ってもらえることになったんですけど、これは当人たちにこのことを伝えていたかどうかは忘れてしまいました……。
あとは聴きやすさに加えて自分らしさを追加できればいいんですけど、まだ模索中ではあります。

Tukkun

——チャンネル全体を見渡すと東北きりたんと可不のユニットで歌われていることが多いですよね。

ぼいどす

これは最初から意図していたというよりは、AIきりたんから始まって可不ちゃんをあとから加えたような形になりますね。その間にもいろいろなペアを組んでいたんですけど、チャンネルの色としてここ3年ぐらいはこのコンビでやっています。この2人の声質からすると、音楽をやっていない人でも聞き分けられるぐらい声質が違うので最初は組み合わせに苦労しましたけど、今は慣れましたね。
あとはたまたまですけど、AIきりたんが結構パワフルな歌声を出してくれて、可不ちゃんの方は弱から中ぐらいのパワーで歌ってくれるので2人を合わせたら表現の幅が広がるよなっていうのは思っています。
その他、現在は宮舞モカで過去曲に再チャレンジ中で、他の歌声ライブラリの追加も検討しています。

https://www.youtube.com/watch?v=M7woEPS3u-0

音色について

Tukkun

——音を聴いていて思ったのですが、かなり生音で録っている音が多いのかなと感じました。

ぼいどす

ドラムとベースはリアルな、そして生演奏らしい打ち込みを大事にしています。また、基本的には極力実際に弾くようにはしていて、鍵盤とシンセパートではなるべく自分自身で演奏しつつ、別の楽器であったとしても鍵盤で弾けるものはリアルタイムで入力していますね。
いろいろな歌声ライブラリを使って、すごい勢いで更新をしてるチャンネルには登録者でも再生数でも負けてしまうので、音質だけはどこにも負けないよっていうような気持ちです。

Tukkun

——生音と関連してですが、バンドサウンドっぽい感じもしますよね。

ぼいどす

バンド歴が20年ぐらいあるので、どうしてもバンドサウンドっぽいところにいきがちというのはありますかね。
あとはSkrillexっていうアーティストがいるんですけど、15年ぐらい前にその方のEDMにハマっていて、「EDMやりたいな」っていうことでEDM向けのDAWやシンセをいろいろ買ったものの、結局あまり馴染(なじ)まなかったんですよ。それで結局やめてしまったっていう経緯があります。
生音と機械の音はあくまで補完し合うもので、お互いを邪魔しないようにはしていますし、意図してどちらかを目立たせることもあるみたいな風に音作りはしていますね。

全体的なバランスについて

Tukkun

——そういう意味では全体的な楽曲のバランスが良いのかなと思っています。

ぼいどす

木造一戸建てに住んでるのでモニタースピーカーで全行程を作ってるんですよ。それなので、ヘッドホンだけでのモニタリングに比較すると立体感とかを確認しつつ作業しているのが曲作りで有利になっているのかもしれないですね。
あとは2023~4年あたりの頃にはMIXで頭痛がするほど悩んでいた時期があって、一昨年の暮れぐらいに合計5万円ぐらいでリバーブを二つほど購入したんですよ。そうしたら空間の処理が一気に変わったので、そこからMIXもうまくなったかなと思います。この辺りはnoteの方にも公開してあると思います。

ぼいどす

特に自分の楽曲ってシンプルなアレンジで作られているものが多いので、MIXとかマスタリングがすごく重要になると考えています。なので2020年頃からはMIXを思いっきり勉強して強化してきた側面もあるので、MIX・マスタリングによって楽曲の印象が良くなるだろうなっていうのはよくよく考えてました。

買ってよかったプラグイン2024
https://note.com/vdstp/n/ned0e41bfcbf3

楽曲の終わらせ方について

Tukkun

——楽曲の終わらせ方もさまざまで楽しかったのですが、『stackoverflow』は突如「バンッ」と終わらせるやり方に驚きがありました。

ぼいどす

『stackoverflow』は結構ノリノリでテンポ感のいい曲だったので、このまま勢いを止めないで終わりたかったっていうのがあったんじゃないかなと思います。フェードアウトさせてもいいと思ったんですけど、ジビエーズさんに提供した曲でもあって、メタバースライブで演奏する曲と考えた時にそれだと興ざめしちゃうなっていうのもあって、おっしゃるような終わらせ方をしました。

懐かしい雰囲気について

Tukkun

——ちなみに、『リコリスの空』を始めとしたいろいろな楽曲でノスタルジーを感じるアニソンのような雰囲気を感じられたんですけど、意図したものはあるでしょうか。

ぼいどす

私自身もアニソンが結構好きなので1990年代の曲を中心にいろいろ聴いていた関係では、懐かしのアニソンから受けている影響も少なくないと思います。また、やりたいことを詰め込んだせいか最近出した3曲は、ジャンルで言えばJ-POPではあるんですけど、J-POPな匂いはあんまりしないと自分でも思っています。

音楽活動全体で大切にしていること

Tukkun

——音楽活動全体で大切にしていることについてもぜひ聞かせてください。

ぼいどす

聴いている人を引き付けつつ、驚かせることができたらいいなと思いますね。最近よく色んなところでユーザー体験とか言われるじゃないですか。そういう視点で音楽を考えたいなと思っています。
基本的には自分が好きなことをやっているんですけど、聴いてくれた人が驚いたり、ノリに乗ってくれたり、つい体を動かしたくなって、口ずさみたくなるようなことをできるかどうか……は置いておいて……(笑)。そうなれたらいいなっていうところでしょうかね!

これからについて

Tukkun

——本当にいろいろ聞かせていただきましてありがとうございました。ぜひこれからの目標や挑戦についても教えてください。

ぼいどす

音楽理論をそんなに勉強してこなかったので、どこまでやれるかわからないですけれど、“和声”などを中心に勉強したいと思っています。ゆっくり始めてはいるので、『遠い夏の空と君と』はそのおかげかストリングスがうまくいった気がしますね。なんか和声をやっていくうちに耳が良くなってくるような気がしました。そういった理論面での強化と演奏面の強化も頑張りたいです。ギターも中学生時代に多少触っていたとはいえ、本格的に弾き始めて6年目ぐらいなのにもかかわらず思うように弾けない時もあり打ち込みにしちゃうこともあって……。

ぼいどす

あとは年内にセカンドアルバムを出したいですね! ただ、今のペースではきついかなと思ってます……(笑)。それと自分の音楽をどうやって多くの人に届けていくのかをVRやメタバースに限らず、いろいろな人に聴いてもらう努力をしたいところですね。

みなさんへのメッセージ

Tukkun

——最後に皆さまへメッセージをお願いいたします!

ぼいどす

見つけてくださってありがとうございます。もし私の作る楽曲を気に入ってくださる方がいらっしゃるならうれしいです。

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